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『廉』から逃れる事がこんなに簡単だと思わなかった。



実際、『逃れる』なんて言葉を使う程縛られていた訳じゃないけど、それでも、『廉の女』っていう目で見られてたっていうのが、廉があたしの教室に来なくなって改めて実感する。



明らかに男子と口をきく数が増えたし、女子の嫉妬の目もなくなった。まあ代わりに、優越感とか同情とかの色も見えたけど。どうだっていい。



廉の存在感がそれだけ強かったって事で、あたし個人なんて誰も見ようとしないもの。




それに、あたしが今欲しいのは一人。



塚本麗次。




あたしの勝手な約束、忘れてなんてないでしょう?