オレ―――呉暁 海斗。


今日、可愛い彼女ができた。




「そういえばさ、月菜」


『ん?』



隣の席の人とペアになり、論題について話し合った結果を発表するという国語の時間。


オレは当たり前ながらも、隣の席の月菜と組んでいた。


先生の指示通り、高2にもなって机と机をくっ付ける。


普段なら若干恥ずかしいこの体勢も、月菜が相手なら全然苦にならない。


2人で見るように配られたプリントを机の真ん中に置きながら、オレは月菜に話し掛けた。


―――そして、冒頭に戻る。



「今日、誕生日だったよな」


『そうだよ。まぁ…朝からあんまり幸せな1日じゃなかったけどね』



苦笑する月菜を見ていたら、オレもなにかあげたくなった。


さっき聞いた話によると、七鴇さんと彰哉からはプレゼントを貰ったらしい。


……彼氏があげないってのは、おかしな話だよな。



「なにが欲しい?」


『えっ!?そういう意味だったの!?い、要らない!なんにも!』



声をひそめて口早に言い、月菜は千切れんばかりにブンブンと首を振った。


……ここまで拒否されると、なんかムカつく。



「………あ」


『な、なに?』



月菜がビクッと肩を揺らしたのがわかった。


……可愛くないこと言いながらも、やっぱちゃんと祝って欲しかったんだな。



『…か、海斗?』



不安そうにオレを上目遣いで見る月菜に、思わずきゅんとした。


俺ってこんなキャラだっけ。



「じゃあ、スリルをプレゼントってのは?」


『…す…スリル…?いや、要らな―――』



ちゅっ



『~~~っ!!!!』


「ははっ。顔、真っ赤」



授業中にキスなんて、そうそう出来ないじゃん?


得意気に笑うオレに月菜も釣られて笑い、どちらからともなくもう一度キスをした。






―――授業後、キスシーンを見ていた七鴇さんに殴られたのは言うまでもない。






【了】