頭を押さえて唸っていたら、呉暁があたしと同じようにすとんっとしゃがんだ。
自然と、目線の高さが同じになる。
『っ…!』
妙な居心地の悪さを感じて、視線を逸らした。
…視界の端で、呉暁が眉を顰めたような気がした。
「…なんで逸らすんだよ、月菜」
どきっ!
名前を呼ばれたことに驚き、つい呉暁に視線を戻してしまった。
「好きだ」
柔らかく微笑んだかと思ったら、そのまま唇を塞がれた。
『~~~っ、ん!ふ、不意打ち禁止!』
顔を真っ赤にしてるのはあたしだけで、さっきまで赤面していた呉暁は余裕そうな表情で笑っていた。
「ほんと可愛いよな、月菜」
『なななななっ!?』
思わずズザザザッと後退ると、呉暁が何故かにじり寄ってきた。
そのまま攻防を続けていたら、いつの間にか背中にはフェンスが当たっていた。
『え、えっ、ええ…!』
「なぁなぁ。この時間……なにしよっか?」
へにゃりと優しく見えた笑みは、一瞬でブラックな悪魔の微笑みに変わる。
にやにやと口角を上げる呉暁は、悔しいけど彰哉くんよりずっとカッコよかった。
『まっ…待っ…!!』
「えー、やだ」
茶色の髪が、太陽の光を浴びてキラキラと輝いた。
―――呉暁海斗。
彼は、ただの隣の席の人じゃありません。
今日から海斗は、あたしの彼氏です。
【了】