「なんですか」








お母さんは泣くのを止めた。









私も気になった。







こんな話をする医師は今までいなかった。














「ある機関で全ての能力を無効にする『キャンセラー』と呼ばれる能力無効化装置が開発されました。
簡単に理論を説明すると、空気中あるいは体内の粒子を拡散させるものです。
ただし、今の段階では無効化される範囲が小さいため、使用者の身体の一部に装着させないといけません。
その装置がこれです」













先生は腕時計を私達に見せた。










「丁度、三つ入荷したものです。
もし、お母様のご了承があれば、お譲ります」















お母さんはすぐには受け取らなかった。
















お母さんは「いくらですか」と小さい声で先生に尋ねた。















「無料です。不安なら売りますが…」














「こんな貴重なものを無料で…」













「はい。それに入荷した三つの内の一つは他の患者にあげました。
私は一つあればいいので…。
予備として買ったものですし、注文すればすぐに手に入る」