シンは、昨日病院の一室でのことを、思い返していた―――


見覚えのない、真っ白な天井。薄暗い室内。

パイプベッドから上半身を起こし、窓の外を望むと、ネオンの町並みは夕闇の中に輝いていた。

それを眺めていると、部屋のドアが開き、ヒカリが顔を出した。

「大丈夫??お兄ちゃん」

ヒカリは、備え付けの椅子に腰掛けた。

「ここ、橘先輩のお父さんの病院だよ」

無口なシンに、ヒカリが状況を伝える。

その時、扉を叩く音がした。

「どうぞ」

ヒカリの短い返答で、ミツキを先頭に三人の人物が入室してくる。

「気分は??」

ハルの問いへ、シンが鋭い目つきで敵意を表した。

「そんな恐い顔すんなよーっ」

ミツキは、不満そうな声を上げる。

すると、ヒカリがシンのシャツを引っ張った。

「お兄ちゃん。先輩たち、助けてくれたんだよ??ちゃんとお礼言って」

シンをわずかに揺すりながら、訴える。

しぶしぶ、シンは三人へ頭を下げた。

「世話になったな」

ぶっきらぼうな物言いで、呟く。

ヒカリには従順なシンを目の当たりにし、三人は少々あっけに取られていた。

「どういたしまして。僕は、天帝久遠(アマミカドクオン)。一応、キミと同じ学年に所属してます」

倉庫に出現した服装とは違い、制服姿に戻っている少女――クオンは、シンに歩み寄る。

「僕がヒカリさんの危険をキミに予言できたのは、何者かが彼らに計画をけしかけたのを知っていたからさ」

きわめて落ち着いた様子で、クオンが言った。

「キミが僕たちとの話し合いに応じてくれたら、教えようと思ってたんだけど…まあ、そんなこと信じてはもらえないだろうから、事が起きたら手助けするつもりでいたんだ」

説明を続け、ヒカリの横へ立つ。

「でも、足止めされちゃってさ。結果的に、怪我を負わせた…ごめん」

クオンは、苦しげな表情で謝罪した。