全身を何度も殴られ、蹴られた。
痛みで意識は保っているが、両腕を二人がかりで押さえられていなければ立つこともままならない―――

「もうやめてぇ!!」

ヒカリが首を振り、泣き叫んだ。
リーダーの男は、ヒカリの顎を掴む。

「じゃあ、君が相手してくれるわけ??」

楽しそうに笑う男を、ヒカリが睨み上げた。

「いいわ。でも、その前にお兄ちゃんを離してっ」

それから、強い口調で言い放つ。

「おい!!今度はこのコの番だってよっ」

男の言葉で、一同の視線はヒカリへ集まった。

すると、閉じかけていたシンの瞳が見開かれる。

「ヒカリに、手ぇ出すなっ!!」

たちまちシンは翡翠色の光に包まれ、両腕を捕える男たちを打ち倒す。
進路を阻む者をねじ伏せ、リーダーの男に迫ると、目にも留まらぬ早さで殴り飛ばした。

「…ばっ化け物っ!!」

先程までシンに暴力を振るっていた男の一人は、声を上げる。

恐れをなし、複数人が逃げ出すため一斉に戸口を向いた―――


「おーっと、センパイ方。奇遇ですねぇ」

そこには、短髪を逆立てた長身の少年が不敵に笑っていた。

「た、橘っ!!」

「俺だけじゃないっすけどねー」

驚愕する男たちに、橘と呼ばれた少年は愉快げな様子である。

「どーもっ。集団で一人の後輩をいじめるなんて、いつの時代っすか??」

橘の後ろから、上下とも黒ジャージの少女が顔を出した。

「伊勢っ…」

上級生は、完全に立ちすくんでいる。

「コッチはアタシらに任せて、妹ちゃん助けてやんなっ」

伊勢という少女が、シンに声を投げた。

その時、シンの隙をつこうと男が襲い掛かってくる。

バチッ―――

シンの腕は、男を弾き返した。
続けて、よろめいた男の鳩尾を拳で打つ。

「やるねーっ」

橘が陽気に口笛を吹きながら、逃走を企てる者を締め上げていた。

隣の伊勢も、玉砕覚悟と言わんばかりに挑んでくる男たちを、次々に倒していく。