「お兄ちゃんっ」

中等部の正門の近くに立っているシンの姿を見つけ、ヒカリが駆け寄る。

「ヒカリちゃん、お疲れーっ」

「ミツキ先輩っ…ハル先輩もっ」

門の陰から現れたミツキとハルに、ヒカリの目は丸くなった。

「今日は、俺達も一緒なんだけど…いいかな??」

ハルが、穏やかな笑顔でヒカリへ尋ねる。

「はい、もちろんですっ」

嬉しそうな表情に変わるヒカリは、頷いて答えた。

やがて、無言のまま、シンが一人で歩き出す。

「あ…待って、お兄ちゃん」

ヒカリは慌てて、シンを追いかけた。

その後へ、ミツキとハルも続く。


「今日、学校はどうだった??」

隣に並んだヒカリに、シンが切り出した。

「えっ??今日??えっと…」

突然の問いに戸惑うヒカリは、顎に手を当て考え込む。

シンは黙ったまま、その二の句を待つ。

「いつも通り、楽しかったよ??…あ、そうそう!1年生の子に、お兄ちゃんのこと聞かれたよ」

ヒカリの発言で、シンや後方に控えるハルは、わずかに目の色を変えた。

「『シン先輩と仲良いですよね??』とか、『昨日どんな話したんですか??』とか。お兄ちゃんのファンって言ってたけど、変わったこと聞かれたんだよね」

状況を思い出しながら、ヒカリが語る。

「確か、『アスワ』さんって名前だったと思う」

「そうか…」

付け加えるように言うヒカリへ、シンはそれだけ返し、肩越しにハルを一瞥した。

「えっ??何??」

視線を不思議に感じたらしく、ミツキが首を傾げる。

「何でもねぇよ」

得意げに笑うハルは、ミツキの髪を混ぜた。