二度ほどノックをして、シンは病室へ入る。

クオンの眠るベッドの傍らには、ヒカリの姿があった。

「ハル先輩がね、連絡くれたの」

シンの疑問に気付き、ヒカリは説明する。

そして、ベッドに歩み寄るシンに、椅子を譲ろうとした。

「俺はいい」

短い言葉でヒカリを制して、シンがクオンの顔へ目線を移す。

かすかに眉をひそめ、じっと―――

「…お兄ちゃんの、せいじゃない」

ヒカリは、独り言のように言った。

思わず、シンの瞳が少し揺れる。

「危害を加えた人が悪いんだよ??」

確認するかのように、ヒカリはシンを見つめた。

「自分のせいだなんて、思っちゃダメ…クオン先輩だって、きっとそんなことは望まないよ」

優しい口調で、シンへ語りかける。

沈黙が、二人の間を流れた―――


「僕なら大丈夫」

ぽつりと、ベッドの上から声が発せられる。

クオンの瞼が、開いていた。

「だから、自分を責めないで」

上半身を起こしたクオンが、シンへ訴える。

「…って言っても、気が済む訳ないか」

シンの無言の返答に、クオンの顔は苦笑いを浮かべた。

「お兄ちゃん…」

ヒカリがシンの感情を読み取り、不安げに眉を垂れた。

「犯人を捕まえるの、協力してくれる??」

人差し指を一本だけ立て、クオンは提案する。

一拍おいて、シンが表情を変えないまま、わずかに頷いた。

「ありがとっ」

弾むような声で、クオンは感謝の念を口にする。

「とりあえず、キミの推理を聞かせてもらおうかなっ」

それから、大きく伸びをすると、シンへ微笑みかけた。