背後の扉が、荒々しく開けられた。

「見ぃつけたっ」

喜びに弾む、低めの女の声がする。

振り返らず、シンはフェンスの外に広がる校庭を見ていた。

「なあ、アタシらと飯食おうよっ」

明るく誘ったミツキが、紙パックのストローへ口を付ける。

シンの視界に入る位置に、クオンとハルもやって来た。

「俺に構うな」

「ここの鍵、ピッキングで開けたのハルだけど??だからアタシらがいたって、問題ないだろ」

冷たい口調のシンに動じず、ミツキは笑う。

「…邪魔したな」

シンが身を翻して去ろうとすると―――左手首を掴みとられた。

「イラつくなって」

シンの細い手首を捕らえながら、ハルは唇の端をつり上げていた。

「離せ」

シンが腕を引き戻すため、力を込める。

しかし、ハルの身体は、びくともしなかった―――

「お前、何でそんな人を避けようとするわけ??」

シンの瞳を正面から捉え、ハルが投げかける。

「お前がヒカリちゃん以外としゃべっての、見たことねぇし…わざと他人を近付けないようにしてのか??後悔ってヤツしないために」

ハルにまくし立てられ、シンはその指を無理矢理ほどいた。

そして、視線を外して中等部の校舎へ向く。

ふと、その屋上に人影があるのに気付いた―――


「危ないっ!!」

状態を窺っていたクオンは、シンの視界を遮る。

次の瞬間、『ヒュッ』と乾いた音で、閃光を放つ物体がクオンの右肩を刺した。

「うああぁっ!!」

苦痛の悲鳴と共に、クオンは倒れ込む。

とっさに、シンがクオンの身体を受け止めた。

「クオンっ」

「バカ、伏せろっ」

無防備な駆け寄ろうとするミツキを守り、ハルは体勢を低くする。

「うっ…」

クオンが小さく唸り、出血している肩を押さえた。

傷に障らぬよう、シンはクオンを腕に庇いながら物影へ隠れる。


クオンの蒼白な顔が、シンの鼓動を騒ぎ立て、全身の血液を沸かせる―――

瞬く間に、シンは翡翠の光を纏っていた。

その場にクオンを寄り掛からせ、立ち上がる。