中学3年の春中旬。


桜の花も散り、緑の葉っぱが目立つ頃。


中体連間近、陸上部も遅くまで練習をやってた。


ハードルで出場が決まってるあたしにとっても、最後の中体連だ。



できれば入賞したいな。



夜7時。
練習を終えたあたしは、いつもの様に自転車置き場へと向かう。



バックから鍵を出しながら、視線はつい…峰岸の自転車を確認してしまう。



峰岸の自転車は赤い。

後輪のカバーにふざけた文字で“フェラーリF40”と書いてあるからすぐわかるんだ。



峰岸の自転車は、まだ停まってた。


剣道部はまだ終わらないみたい。



たまに自転車置き場で会う事もある。



「一緒に帰ろっか」



峰岸は笑って、いつもそう言うんだ。



停まってる峰岸の自転車を見て、剣道部を覗いてみようかと思って…やめた。



わざわざ見に行く自分がおかしいと思ったからだけど。


別にいいじゃん。
峰岸は峰岸だもん。




自転車を押し、帰宅しようとしたあたしの視界に、昇降口前で話す二つの人影が飛び込んできた。



自転車を押していた手を止め、立ち止まる。