「元気そうだね、永山」



あたしと峰岸は、地下スタンドバーに居る。



偶然会った、あたしと峰岸。

居る訳がない、会う訳がない、場所で…。

たくさんの人が暮らし、ただすれ違うだけの都会で…会ってしまったんだ。


互いの存在に、気付いてしまった。


「峰岸も…元気そうだね」

カウンターに置かれたカクテル、その鮮明な空色を見つめながら、あたしは声を絞り出す。





峰岸と会った時、一緒にいたのは高校時代の友達だと聞いた。

ほろ酔い加減のその人達に飲み屋に誘われたあたしの前に、峰岸は立ち塞がった。


「永山は、そういう子じゃないよ」



そういう子?



……峰岸の中では、あたしはまだ子供なんだね。



八年前…最後に会った雪の日……あれから八年も過ぎてるんだよ?

峰岸……。



あたしも峰岸も、26歳なんだよ?




峰岸は、やっぱり変わっていなかった。


でも…男っぽくなったかな?


また身長が伸びたんだね?

背中も、少年の頃よりも広くなったね?

髪型も、さっぱりと大人らしくなってるね?

今も、かっこいいね?


でも、笑顔は……変わらないんだね。