逃げる様に峰岸と別れ、自分の部屋へ駆け込んだあたしは……ひたすら泣いた。

泣く事しか、できなかった。



“アメリカの大学に行くんだ”



その言葉に、あたしは何も返答できなかった。


自分の気持ちも、東京に行く事も…何にも。



“アメリカで、宇宙について本格的に勉強したいんだ”



峰岸……。


今度はアメリカ?



峰岸は、どんどん離れてく。


手を伸ばしても、届きそうなあたしの手をすりぬけて、どんどんどんどん、離れてく。



最初は東京。


今度はアメリカ。




あたし……どれだけ走ればいいの?


いつまで追い掛ければいいの?



峰岸、峰岸……峰岸…。



ハードルを飛び越えていると思っていたのは、あたしだけかもしれない。



峰岸は、走り高跳びをしているんだ。



空に届きそうなくらいに高いバーを、峰岸は走って、飛び越えてる。


地面に背を向けて、胸を空に向けて…ただ、高く。


目の前にあるのは、空、そのむこうにある宇宙。



地面を走っているあたしに、峰岸は気付かない。


上を見ている峰岸には、あたしは……見えてない。