春が過ぎて夏。


3年生のあたし達にとっては、本格的に受験に集中し始める時期。



「ねぇ、麻美は高校決まったの?」


夏休み前の教室では、受験の話ばかりだ。

あたしも例外では無く、友達の美幸と受験の話題。



悩み半分、期待半分。

高校生になるって、少し大人に近付く感じだ。



「う〜ん…まだ漠然としか考えてないなぁ」

「麻美はのんびりすぎ!」

美幸は椅子の背もたれに寄り掛かり、苦笑混じりにため息。


自分でも分かってるよ、のんびりだって。


「麻美の彼氏の峰岸くんなんかさぁ〜…」

「違うから」


みんながそういう風に見るから、否定するのも面倒になってくる。



「峰岸くんは、関東の有名公立受けるんでしょ?」




…………え?

関東………。




「何?それ……関東って何?」

「麻美、聞かされてないのっ?!」

美幸は驚いて、椅子から半分腰を浮かせた。



関東の公立って……あたし、知らない……何にも聞いてないよ。



峰岸から聞いてないよ!



何で?
何であたしが知らないの?

どういう事…峰岸…?

あたしは1番の理解者だって言ったじゃない!