20XX年1月3日


夕方、理人から電話きた。

「もしもーし。」

『んだよ、普通に元気じゃん。』

「え?」

『あれから連絡ないから心配してた。』

あれから…?

ヤバい。忘れてた。

つか、結也さんと再会したんだった。

良くも悪くも〈忘れてた〉よ。

「悪い悪い。俺、あの日のことあんま覚えてねぇんだよ。起きたらベットで寝てたって感じで…。」

『覚えてねぇならいいよ。』

「……俺、なんか言ってた?」

『…………。』

「言えよ。気になるだろ。」

……余計なこと言ってねぇよな。

『別に。かなり動揺して泣きじゃくってたけど、なんとか自分で歩けてたし…。』

「…まじか。」

なんとか歩けてたって。

つーか、泣きじゃくったんだ俺……。

恥ずかしい。

『琉生、ずっと泣きながら結也さんの名前呼んでたよ。』

「…………。」

なんで結也さんの名前を呼びながら泣いたんだろう。

わかんねぇ。

『お前と結也さんの関係って?』

「中学ん時の先輩後輩。」

『それだけじゃねぇだろ?』

「………それだけだよ。」

『犯されそうになってたくせに。』

「……っ」

ズキンと頭が痛む。

やめろ、言うな。

『泣きながら言ってたよ。結也さん捨てないでって。』

「知らねぇよ………。」

『琉生さ、もしかして結也さんと……。』

「うるせぇ!!だまれ!言うな!」

思わず大声を出してしまった。

電話越しに理人が息をのむのが分かった。

「そーだよ!俺と結也さんは付き合ってたよ!!でも捨てられたんだよ!!俺は結也に捨てられたの…ッッ」

言ってて泣きそうになった。

泣きたかったけど、泣きたくなかった。

『琉生……。』

「………ごめん。もう切るな。」

理人の返事を聞く前に切っちゃった。

「結也さん…………。」

ライブであったのはたまたまだ。

もう二度と会うことはねぇよ。

だからもう気にしない。