20XX年11月2日


今日ね、人の名前忘れちゃってた。

去年同じクラスの奴で、普通に仲良かったんだけど。

「琉生、国語の教科書忘れたから貸して〜」

「……?」

普通に誰か分かんなかった。

「?あれ、琉生も持ってない?」

「……誰?」

「はっ?ちょ、何の冗談ww」

「え、だって、喋ったことなくね?」

「……それガチで言ってる?」

「え……?」

「もう、良いわ。」

そう言って出て行った。

そん時の俺は誰か分かってなかったから、マジで誰だよって思ってた。

「ちょっと琉生。さっきの冗談だよね?」

「何が?」

「森永君のこと。本当に忘れちゃったわけがないよね?去年、仲良かったじゃん!」

優奈の言葉で思い出した。

あ、ヤバいってマジで嫌な汗かいたわ。

一年の時、仲良かった友達の事忘れちゃってた。

慌てて教室飛び出して森永のこと追いかけた。

ちゃんと国語の教科書持って←

「さっきの冗談だからな!?ほら、教科書」

まだ廊下に居たから肩掴んで言った。

「なんだよ!ビックリさせんなよー!冗談が過ぎるぞ(笑)」

「ごめんごめん!」

…………冗談って信じてもらえたみたいで良かった。

人の事を忘れるのは初めてだったから、すげー怖くなった。

俺はこれからもっと色んな事を忘れていく。

万里弥もかんなも部活も家族も。

たくさんのみんなとの思い出も。

どうしょうめちゃくちゃ怖い。

誰か助けて。

何で俺なんだよ。

嫌だ。

忘れたくないのに。