グッと空気を吸い込んで、止まった呼吸を取り戻す。
でも、視線は凛桜を見つめたまま逸らさない。
否、逸らせないんだ。
絡まった視線を、解くことが出来ない。
「奈津、どうかした?」
「う、ううん。何でもない」
こいつは…、わざと?わざとなの?
こんなに自分の魅力を最大限に利用するやつ初めて見たわ。
まだくらくらする頭に眉をしかめて、私は続きを話すために唇を開く。
それに気付いた凛桜は、スッと表情を引き締める。
それを確認して、私は息を吸い込んだ。
「六歳の時、家族で夜中に出かけたことがあったの」
少し曖昧になった思い出を、記憶の奥から引き出しながら喋る。
その間もずっと、視線は絡まったままだ。