「カナコちゃん、夕飯できたよ」

呼ばれて気付く。

……少し、横になっていた。

わたしはベッドから体を起こし、ダイニングへ向かった。





「今日の夕飯はハンバーグだよ」

三食、宮辺さんが作ってくれる。

料理はあまり得意な方ではない、と思う。

それでも毎日わたしに作ってくれる。

ありがたいことだと思う。

……少しメニューが子供っぽいけれど。

食卓に着く。

「……いただきます」

礼儀を言う。





宮辺さんは研究者である。

何を研究しているのか、わたしは詳しく知らない。

教えてもらえないわけではない。

「人の願いを具現する存在、その力がこの世にはある」

夕飯のとき、宮辺さんはいつも今日の研究成果について話してくれる。

わたしには――失礼だけれど、妄言にしか聞こえない。

宮辺さんは研究者と言うよりロマンチストなのだとわたしは思う。

「その力がなぜはたらき、どのように作用するのかまだわかっていないんだ」

インプットもアウトプットもわからないものが、どうして存在すると言い切れるのか、わたしにはわからない。

だから宮辺さんは夢を語っているようだと思う。

わたしがまだ中学校に上がる前からそうだった。