走る。
雨音がうるさかった。
それから、寂しかった。
やがてわたしは、そこにいた。
展望台に。
どうしてかわからない。
ただ、カクさんをどこにも見つけられなかった。
カクさんが、どこにもいなかった。
いやだ。
寂しい。
「カクさん……っ」
どこにいるのお……。
わかんないよお……。
怖い。
どこにもいないことが怖い。
雨は強くわたしを打ちつける。
それでは気がまぎれなかった。
声が聞こえた。
『忘れてしまえばいいよ』
いやだ。
『それでも笑顔でいられる』
でも、忘れてしまったら、悲しいよ……。
『忘れてしまってもいい。だって……』
その声は言った。
『今悲しいことだって、忘れられるから……』