『カナコちゃんへ 我が家のカレーの作り方!』

そんなタイトルが書かれていて、あとはメモ書きだった。

ところどころ『ポイント!』など蛍光ペンで書かれた文字がある。

本当にただカレーの作り方が書かれただけの紙だった。





なのに、わたしの目の端から何かが伝っていた。



どうしてわたしは涙を流しているんだろう。

カレーの作り方が書かれた紙を見ながら。

優しさを感じる。

懐かしさを感じる。



――寂しさを感じる。

いやだ……。

寂しい……。

寂しいよお……。

その場に崩れる。

身をよじる。

それでも、寂しさがまぎれない。



どうして。

どうして寂しいんだろう。

どうして忘れてしまったんだろう。

何を。

わたしは憶えている。



「……カクさん……っ」

その笑顔を、憶えている。

けれどさっきまでは忘れてしまっていた。

いやだ……。

「忘れたくないよお……」

寂しい。

人のことを忘れてしまうことが寂しい。



どこに行ったの?

どこに……。



わたしは駆け出す。

あてもないけれど、外へ。

雨が降っていても構わない。

外へ。

わたしは走り出していた。