自分の部屋に入り、扉を閉める。
宮辺さんが用意してくれた、わたしの部屋。
わたしにとってこの部屋は、この家のどこよりも居心地がいい場所だった。
――宮辺さんに気を使わなくていいから。
肩にかけていたカバンを下ろす。
制服は、着替えない。
それが宮辺さんに対する礼儀だと思うから。
わたしの両親はいない。
なぜなら。
――殺された。
赤の噴水が上がるその塊を。
鼻を突く異臭を。
今でもすぐに思い出せる。
誰に殺されたか?
それは、憶えている。
その犯人を、憶えています。
それは――宮辺さん。
宮辺さんが、二人を殺しました。
包丁で。
何度も何度も突き刺して。
わたしにべっとり返り血が付いたのを憶えています。
でも仕方がなかった。
わたしの両親が、宮辺さんのご両親を殺した後だったから。
宮辺さんのお母さんはわたしのお父さんのお姉さん。
つまり、わたしのお父さんがわたしのおばさんを殺したわけで。
宮辺さんは、わたしを恨んでも仕方ありません。
だけど、宮辺さんがわたしの両親を殺したから、おあいこ。
わたしと宮辺さんは恨みっこなし。
それで、宮辺さんがわたしを引き取ってくれたから、わたしは宮辺さんに遠慮しなくちゃいけない。
だから、礼儀をもって接しているの。