カク……さん?

声が出ない。

力が入らない。

ただ、わたしの体は前に倒れていくだけ。



それを、カクさんは抱きとめてくれた。



「泣かなくていいんだ。カナコちゃん、笑って」

カクさんは、その顔に笑みを張り付かせたまま。

「ずっと笑顔でいてくれればいいんだよ」

わたしの熱くて冷たくなっていく場所をなでてくれていた。

「ずっと笑顔で――」



カクさんは、そう言った。

だから、わたしは。



笑った。



日の光は赤色に変わり、町を染める。

これが朝焼けというものなのだろう。

その赤――オレンジの視界の中で、カクさんは。

見えなくなってしまった。

わたしは、目を閉じた。









意識が、浮上する。

閉ざされた目を開く。

それから周りを確認する。



ここは、どこだろう。

町を一望できる場所。

……展望台?

どうしてわたしはこんなところにいるんだろう。

わたしには、わからなかった。



もう、日はずいぶん昇ってきていた。