「カナコちゃんに二つ、謝っておきたいことがあるんだ」
その言葉で胸騒ぎが、
「一つは、異世界を見つけられなかったっていうの、あれウソなんだ」
次第に大きくなる。
「もう一つは――」
やめて、とわたしは切に願った。
「カナコちゃんに、カレーの作り方教えられそうにないんだ」
――どうして。
やっと家族の生活が始まったというのに。
やっと本当の家族になれたっていうのに。
どうしてそんな。
――もう終わってしまうような言い方をするの?
「カクさん」
怖くなって、名前を呼ぶ。
日が昇ってきていた。
その日に照らされてカクさんの頬に光るものを見つけた。
「……ごめん、カナコちゃん」
どうして。
「ボクは……いや、ボクもキミを置いていってしまう」
やめて。
「今ここで何を言っても無責任になってしまうけど」
何も言わないで。
「悲しい現実を忘れていいなんてボクは思わない」
まるでお別れみたいな。
「けれど」
ふと、わたしの脇を冷たいものが通った。
その感覚もふっと抜けて、そこにわたしの熱が集中する。
でも、そこからどんどん熱が流れていってしまう。
外に。
わたしの体の外に。
カクさんの手には、光るものがあった。
それは、銀の剣の形をしていた。