カクさんがスプーンにカレーをすくい、口に運ぶ。

わたしは思わず息を飲む。

どう……かな。

カクさんの笑顔では詳しい表情が読み取りにくい。



「……おいしいよ」

それを聞いて、ふう、と息がもれる。

わたしも食べてみる。

……?

カレーはおいしいけれど、いつものより味気ない気がする。

そう。

「カクさんが作ったほうがおいしい……かな」

それが、わたしの正直な感想だった。

「それでも、はじめてだったら上出来だよ」

それは慰めにしか聞こえない。

ちょっと、がっかりしてしまう。

最初から上手くできるわけじゃないけれど、カクさんを満足させられなかったから。

夕飯を代わりに作ろうなんて、出過ぎた行動だったかな……。



「料理、教えようか?」

そうカクさんが言った。

「ボクもあんまり上手くないけどさ、……たまにこうやって作ってみるのもいいかもね」

カクさんはその笑みを一層深くする。

「本当に?」

うん、とうなずいてくれた。

「いやあ、ついにカナコちゃんに我が家の味を教えるときが来たのかあ」

……わたしは嬉しかった。

そうやって、認めてもらえた気がして。

これが家族なんだって思えたから。