家族としての生活が始まって、ある日のこと。
家に帰ると、カクさんが外に出る準備をしていた。
いつもの笑顔だけれど、少し興奮した様子。
どうしたの、なんて聞く前に答えが来た。
「異世界が、ボクらの理想郷が見つかったんだよ!」
それは驚きだ。
カクさんが何年も追ってきたものが見つかったというのだから。
「どこにですか!?」
自分の声が高くなっているのがわかる。
「詳しくはわからない。けれど必ずこの町に存在する。今から探しに行くんだ!」
この町、というのは何の巡り会わせだろうか。
わたしたちの家はこの町に昔から住んでいる一族だからだ。
「わたしも行く」
「いや、この件は外にもらしちゃダメだからね」
外、と言われて少しガッカリする。
もちろん仕事という面から見たらわたしなど部外者なのだけれど、それでも家族なのだから頼ってほしいところもある。
そんなわたしの思考を読み取ったのか、カクさんは、
「そのうち、きちんと話すよ」
と言ってくれた。
「帰るまで、どのくらいかかる?」
「わかんないけど……夕飯までには戻ってくるよ」
……早い。
「子供が遊びに行くわけじゃないんだから……」
「それだけ確信があるってことだよ!」
行ってくるね、とカクさんは家を飛び出していった。