「カナコちゃんは異世界なんて存在すると思う?」
どうだろう。
「……宇宙人が存在するのなら」
「宇宙人と並べられても困るなあ」
「ツチノコ」
「UMAとか伝承みたいな扱い?」
「徳川埋蔵金」
「別に私利私欲のために探してるわけじゃないよ」
でも、わたしにはそんな妄信的なものと同じに見える。
だからわたしは、カクさんのことを
「ロマンチスト」
と呼ぶのである。
「ロマンチスト……いいね」
ちなみに、ロマンチストは空想家という意味で使った。
……どうしてカクさんは異世界なんてものを信じているのだろう。
「どうして異世界なんてしん……研究してるの?」
「『信じてる』って言おうとしたね?それは信じてない口ぶりだね?」
正直、信じてない。
「うわー、カナコちゃんの目が冷たい」
「で、どうして信じてるの?」
今度は言いまわさずに聞く。
「……結果には必ず原因がある。でも時に原因がわからないものがあるんだよ」
カクさんは遠い目をしている。
「ボクがどうして異世界なんて信じようと思ったのか。その原因がわからないから信じようと思ったんだよ」
……?
「どうして信じているのかわからないから信じようと思った、なんて説明になってないよ」
「んー、まあとにかく信じてるんだよ。それが仕事になるしね」
カクさんはかなり気楽な人だと思う。