「そりゃまあ、そうか」
宮辺さんは声を出して笑った。
「カクだよ、カナコちゃん」
宮辺カク。
わたしは呼ぶ。
宮辺さん――もとい、
「カクさん」
「『さん』はいらないよ」
「年上の人で……人だから」
敬語は直す。
「ありがとう、カナコちゃん」
カクさんの顔に張り付いていた笑顔。
けれど、今はカクさんの本当の笑顔を見た気がした。
まだ固いけど。
今まで家族じゃなかったかのようだけど。
わたしたちは家族になった。
礼儀をまったく払わなくてよくなったわけじゃないけれど、きっと困ったときは頼る事ができるようになった。
そう思う。
……カクさんはわたしを待ってくれていたのかもしれない。
だとしたら、今のわたしは期待に応えることができたのだろうか。
家族が欲しいなんて願っていたけれど。
わたしには家族がいた。
それを誇ろう。