気が付くとわたしは宮辺さんに抱きしめられていた。
わたしの右手首は押さえつけられ、持っていたナイフを落としてしまう。
なにより、宮辺さんの体温を、呼吸を感じたのは初めてだった。
「大丈夫だから」
宮辺さんが言った。
何が大丈夫なんだろう。
「真実は……一体何が真実かなんて、わからない」
宮辺さんが何を言っているのかわからない。
「でも、これだけは憶えておいてほしい」
……?
「ボクはカナコちゃんの家族だから。家族でいたいと思ってるから」
それは許されたということなんだろうか。
わたしは、許されたのだろうか。
だとしたら。
わたしは……。
「わたしは……宮辺さんの家族になっていいんですか……」
今まで仇敵同士だと思っていた。
本当はわたしだけが宮辺さんの仇敵だったけれど。
わたしは思い出さないように宮辺さんと距離を置いてきた。
でも、宮辺さんが家族でいていいって言ってくれるなら、わたしは。
「宮辺さん……!」
その名を呼ぶ。
そのとき、わたしは泣いていた。
今まで一人で空回りしてきたことを後悔して、泣いていた。