「…ジョンソン・ウェイトン商会…」

グラッブという商業区画の一角にある高級ブティックだ。

新興の貴族階級―ジェントリの一族の新しい、レースや絹のリボン、サッシェなどの装飾品なんかを貴族相手に売る評判のいい店。インチではなく柄で売り、装飾品も怪しげな偽物ではなく本物の職人の手でオーダーで作らせている。もちろん店に並ぶ商品には値段はついていない。

「なんでそこに?」
「―…」

花売りの少女は手をひらひらさせてあだっぽく微笑み、雑踏に消えていった。

残されたアルバートはしばしぼんやりとしていたが、通りすがりの人にぶつかり慌てて歩きだした。

『ジョンソン・ウェイトン商会』へ。