アルバートは思わず眉をひそめた。
いっそ追い払おうとしたがふとなんとなしに思い止まり、欝陶しそうに手の平を見せて背後を向けた。
「いらないよ。あっちへ……」
そんなギルバートの背中に、ひとつのよく通る声音が降ってきた。
「『蔦薔薇屋』への目印を知りたくないですか?」
え、と咄嗟に振り替えるとにこにこした花売りの少女が籠から黄色い、絹のリボンの蔦薔薇を取り出しているのが見えた。
まさか、そんな。
蔦薔薇屋と言ったか。
そんなことはない。
聞き間違いだろう。
「あの方がおっしゃっていたわ。『来ることを許す』と」
無意識に手を延ばして、その刺の細かい花を包む、幾重の色紙に指先が触れた。
白い絹のリボンには、ひとつの金糸で縫われた蔦薔薇がある。その脇には同じ糸で「次はジョンソン・ウェイトン商会に」と縫い取られている。
指が震えた。
蔦薔薇。
それは、多数の噂の中で出てきた『蔦薔薇屋』の目印。きっとあると言われている、黄金の目印。
「あげる。あなた、なんだかのっぴきならない事情があるみたいだから連れてきなさいってたわ。」
いっそ追い払おうとしたがふとなんとなしに思い止まり、欝陶しそうに手の平を見せて背後を向けた。
「いらないよ。あっちへ……」
そんなギルバートの背中に、ひとつのよく通る声音が降ってきた。
「『蔦薔薇屋』への目印を知りたくないですか?」
え、と咄嗟に振り替えるとにこにこした花売りの少女が籠から黄色い、絹のリボンの蔦薔薇を取り出しているのが見えた。
まさか、そんな。
蔦薔薇屋と言ったか。
そんなことはない。
聞き間違いだろう。
「あの方がおっしゃっていたわ。『来ることを許す』と」
無意識に手を延ばして、その刺の細かい花を包む、幾重の色紙に指先が触れた。
白い絹のリボンには、ひとつの金糸で縫われた蔦薔薇がある。その脇には同じ糸で「次はジョンソン・ウェイトン商会に」と縫い取られている。
指が震えた。
蔦薔薇。
それは、多数の噂の中で出てきた『蔦薔薇屋』の目印。きっとあると言われている、黄金の目印。
「あげる。あなた、なんだかのっぴきならない事情があるみたいだから連れてきなさいってたわ。」