……よくない。


「那岐、なんか勘違いしてない?」

「……勘違い?好きな人いないってこと?」

「いや……」


言葉を濁す悠里くんは、視線を逸らして逃げるようにフェンスに寄りかかった。


「……意味、分かんないよ」


何が勘違いなんだ。

悠里くんが考えてることが分かんない。全然、分かんない。


「悠里くんっ」

「……ん?」


俯いてた顔が上がって、彼と視線が絡んだ瞬間にどうでもよくなった。

今まで大事に守ってきたものとか、何もかも、ぶち壊してしまいたくなった。


「私、悠里くんが好きだよ!今までずっと“友達”の関係を壊したくなくて言わなかったけど、どうせ、気づいてたんでしょ?」


覚悟していたような悲しさとか苦しさとかはなかった。


「気づいてて、私に遠慮して好きな人に告白できなかったんなら、本当にごめん、」