あまりにも自然な動作で延びてきた先生の大きな手。


その手は、髪をすくようにして、私の頭をゆっくりと撫でた。それはもう、どうしようもないくらいに優しい優しい手つきで。



「本当に馬鹿だよな、お前は」



言葉は意地悪なのに、その言葉を紡ぐ声はどうしても優しいから、胸がいっぱいになる。



「オイ、これ何だと思う?」


先生はジャージのポケットから小さな紙切れを取り出すと、そっと私の手にそれを握らせた。


薄青色の紙には、“アイス”の三文字。


「これ……アイス券……?」

「あぁ」

「ッ……てことは……!」

「あぁ、そういうことだ」


先生はふ、と目を細めて私を見つめた。


「お前って奴は肝心なところで駄目になるくせに、結果はしっかり残すんだよな」


「ほんと、面白ェ奴」 先生はぽん、と私の頭に手を乗せると、柔らかく微笑んだ。