「ようやく目ェ覚めたか」


次に声が聞こえてきた時、私は保健室のベッドの上にいた。


「熱中症だとよ」


ぼんやりする視線を声のする方へ向けたら、脚を組んでベッドの横の椅子に腰かけている小田切先生がいた。


「熱中症……?」

「あぁ。ったく……よりによって試合中にぶっ倒れやがって」


「おかげで俺までアウトになっちまったじゃねーか」 そう言いながら小さくため息をついた小田切先生。


「あ!」


思わず飛び起きる。


「ドッジボール!ドッジボールは!?」

「そんなもんとっくに終わったよ。今頃閉会式してんじゃねーか?」

「閉会式!?」


窓の外に目をやれば、さっきまで抜けるように青かった空は、すっかり鮮やかなオレンジ色に変わってしまっている。


「う……そ」


体からするする力が抜けていくような感覚。あまりのショックに頭の中が真っ白になる。


あんなに、頑張ったのに。


あんなに、頑張って練習したのに。


あんなに、先生も一生懸命になってくれたのに。


優勝したかった。


優勝して、先生を喜ばせたかったのに……。