暑い、疲れた、くらくら、する。



「莉華」



不意に呼ばれた名前。



「痛かったらごめんね」



誰……?


視界が霞んで分からない。



「結城!」


だ、れ……?


ふ、と身体中の力が抜けた。


地面に座り込むように崩れて、熱い砂のざらりとした粗い感触を肌に感じる。


あ……立たなきゃ。


立って、ボール取って、パスしなきゃ……小田切先生に。



「結城……!」



小田切……せん……せ?



顔を上げたと同時に聞こえた、ドス、という重くて鈍い音。



「……?」

「なにやってんだ……馬鹿」



目の前には小田切先生の苦しそうに歪んだ顔。


小田切先生は私をかばうために、私とボールの間に飛び込んだ。そして、そのボールは小田切先生の背中に強く当たって、今ころころと私の横を転がっている。
ぼんやりする頭で、この状況を理解するには少し時間がかかった。


わ、と私たちの周りに人が集まってくる。



「莉華!莉華大丈夫!?」



たくさんの声が、私の名前を呼んでる……。



その声はだんだん遠くなって……。



いつしか、聞こえなくなってしまった。