カバンを手にしたまま、その場から動けなくなったあたし。
もうすでにクラスの人たちは帰っていなくなっている。
教室には、あたし一人。
先輩たちのところに行かなきゃ・・・っ
そう思うのに、足が動かない・・・
そのとき、勢いよく教室の扉が開いた。
「小西ちあ。いつまで待たせんの?
それとも怖くて来れなかった?」
数人の先輩たちが、バカにするように笑う。
その笑い声で、あたしは金縛りが解けたように
ハッと我に返る。
そして平然を装って、いつものように嫌味っぽく答える。
「そんな訳ないじゃないですか。
あたしもそんなに暇人じゃないんです。今から行きますよ」
その言葉がそうとう気に入らなかったのか、
先輩たちは舌打ちをしてあたしを睨みつけるように見た。
あたしはその場で小さく深呼吸をする。
カバンを持ち、ゆっくりと歩き出した。
そして、ケータイを握り締めて先輩たちの後についていく。