「……失恋した。」

そう言って百花が現れたのは、小1時間程前のこと。


「と言うことで、よろしくね。ちーちゃん?」


唖然として立ち尽くす俺に下げていた袋を押し付けて、


「お邪魔しまーす。」


慣れた様子で部屋に上がり込んだ。


「……またかよ。」


それからずっと、
アイツは1人で飲んだくれている。






こういうことは珍しくない。

むしろ、しょっちゅうだ。

失恋する度に、百花はこうして俺のところにやって来る。


俺の都合も時間もおかまいなしに。

ほぼ100%の確率で酔った状態でやって来ては、人を召し使いのようにコキ使う。

さらに飲んで、わめいて、
泣いて、暴れる。


……たまったもんじゃない。


文句を言ったって、


「“弟”でしょ?」


その一言でねじ伏せられるのがオチだ。

仕方がないから、今まで黙ってつき合ってやってたけど……

もう限界だ。


何せ、今日はクリスマスイヴ。


必死に埋めた予定も

頭を悩ませた計画も


すべてが

ぶち壊されるなんて…


あんまりじゃないか?