「樋山美桜です。東京から来ました。よろしくお願いします。」
そう言って僕の目の前に現れた君は、天使のように美しく微笑んで、僕に会釈をした。
僕に、と言うより、クラスのみんなに、と言う方が正しいのかもしれないけど…。
君が転校生として僕の目の前に現れたあの日から、僕のつまらない毎日は輝き出したんだ。
いつだって、僕の先を行っていて、けど、僕の歩幅と同じ速度でゆっくりと歩いてくれた君が、僕は大好きだったよ。
けど美桜、僕は知らなかったんだ。
美桜はいつだって、僕の知らない世界にいたんだね。
僕なんか入る隙もないくらい、暗い、太陽の当たらない細い路地裏で、一人、泣いていたんだね。
僕は今でもあの奇妙な時間のことを思い出すと、ひどく混乱するよ。
けど、君はきっとそれ以上の重荷を抱えて生きていたんだ。
だから僕は、君と君の太陽を忘れないでいることにするよ。
それが、僕が君に出来る唯一のことだと思うから。
ねぇ美桜。
君は今どこで、何をしていますか?