駅前大通り
信号の点滅と合わせて
騒がしく車が往来し、人も一緒に流れる
「 阿部先生! あの人は? 」
立ち止まった交差点前
歩く人達の額についたシール
そこに書かれた文字と色 ――
「 学校の中だけじゃないって
どういう事だ…? 」
とりあえず、聞かれた通りに答える
赤、黒、緑、青 ――
「 … 真っ白って、
やっぱり少ないんですね
あなたがさっき
"真っ黒"だって言った人は
指名手配犯です
サワディー先生は、
ホントに清廉潔白な方ですし
赤と言ってらっしゃったのは
これから試合へと向かうサッカー選手
オーラが、シールといった形で
見えるようになったのかもしれません 」
「 オーラって… ―― あ 」
「 どうしました? 」
「 …見えなくなった 」
本当に突然
人の額に貼りまくられていたシールが
フッと消えてしまう
藤本に付き合った時間は
さほどでもないのに
人込みのせいか、酷く疲れた
「 …ちょ
少し座らせてくれ
さっきおまえが言ったけど
ホントに風邪でも
ひいたのかもしれない… 」
頭がクラクラして
ベンチに座り、
少し熱くなった頭を押さえる
すぐに藤本が飲み物を買って来て
俺に持たせてくれた
「 ありがとう… 」
「 いえ 」
「 …おかしいだろうそれって
何でサラリーマンと
高校生が、同じグレーなんだ 」
「 まんまの意味でしょう? 」
「 …なんで突然見えなくなった 」
「 予想としては
青戸リルカと
距離が離れたからでしょうね
"貴婦人"と相思相愛だった男は
手を取り合い
巨石を自在に動かしたりしたり
空を飛んだそうですよ 」
「 …どんなファンタジーなんだよ
これ、見えるだけなんて
何の役にも立たないじゃないか
―― それに何でおまえ 」
「 はい? 」