「ギルバート、俺を止めるなよ。」

フィルリアは黒いローブに身を包み、顔を隠すためか、フードを深く被った。

俺の名前はギルバート。

ギルバート・クリスター。

ケリア・クリスターの一人息子だ。

こっちはフィルリア。

うちに暮らす様になってから三ヶ月経つが未だに、謎多い女だ。

三ヶ月前の嵐の日……

酷い雨風に玄関扉が粉砕された。

修理する為、外に出ると、血だらけのこいつが倒れてたって訳。

「俺はお前を止めるよ。」

「なっ!?」

「始めに言っただろう。

一人で無茶を仕出かしたらキレるって。」

聖宿祭。

此のティアズ聖国は王家の使う聖術を神の力と呼び、崇拝している。

特に“神の宿木”と呼ばれる宗教団体を皆主としていて、
聖宿祭は神の宿木が開く年に一度の、
王家がうち……ハイリュードの城下町にやって来て、神に祈りを捧げるってだけのくだらない祭だ。

フィルリアは俺の部屋……屋根裏部屋で看病される様になってから一ヶ月。
具合も良くなって、漸く口が聞ける様になった頃だった。

其の日の晩、酷い悪夢に魘されながら言った。






『復讐だ……

王家に天罰を……』

しつこく其の事について問い詰めたら、やっとフィルリアは白状した。

『王家の力は神の力何かじゃない。

俺達の一族から奪い取った力なんだ。

だから次の聖宿祭で、王を殺して奪い返す。』

血塗られた、王家の刻印入りのナイフをフィルリアは握り締めた。






「お前が法皇を殺すんだったら、俺も手伝う。」

「なっ!

お前は何でそんな莫迦なんだ!?

王を殺すんだぞ!?

聖国の反逆者になるんだぞ!?

俺みたいな見ず知らずの奴の為にそんな大それた事、出来る筈が無い!!」