まるで、全てを見透かそうとしているみたいで。

彼に全てを見透かされているみたいで。

一見飄々とした空気を持っている彼だが、見かけとは裏腹の鋭さも隠し持っている。

どうしたらそうなるのか、本当に彼はよくわからない。

「いや、何もない」

僕は目をそらすと、携帯電話をスーツの胸ポケットに戻した。

「取引先との大事な商談があって、今はその返事を待っているんだ」

できる限りウソを並べた。

またこうして、聖と共有しあう。

人にはウソと秘密で壁を作って、自分たちは壁の内側で共有する。