けど、僕たちは結婚しない。

これから先の未来も、僕らは結婚することはない。

何故なら、僕たちは結ばれているからだ。

「春ちゃん」

聖が僕の名前を呼んで、僕の顔を覗き込んできた。

僕はそんな彼女の唇に、そっと自分の唇を落とした。

彼女と、結ばれているから。

躰だけではなく、心も結ばれている。

髪の1本1本先から、手足の爪の先まで僕らは結ばれている。

「――ふうっ…」

もれる吐息も、唾液も、みんなみんな結ばれている。

「――春海、冷めちゃう……」

こぼれ落ちるその声も、結ばれている。