「そう、聖だ」

聖に言い聞かせるように、僕は言った。

お前の名前は聖だ、と。

「嫌か?」

何も反応がない聖に問いかけると、彼女は首を横に振った。

「ありがとう」

笑顔と共に、小さな聖の唇からその言葉が出てきた。

笑った顔を初めて見た。

笑った聖はとてもかわいくて、ドキッと僕の心臓が鳴った。

ああ僕は、本当に聖に恋をしてしまったらしい。

「僕の名前は西山春海、お前の好きなように呼べばいい」

彼女に自分の名前を言った。

「――はるみ…」

そう呟いている彼女に、
「春の海と書いて、“春海”だ」

もう1度僕は言った。