彼女は驚いたと言うように伏せていた目をあげた。

名前は決まっている。

彼女につける名前は、もう決まっていた。

彼女と会ったその瞬間から、もうすでに決まっていた。

「――“聖”だ」

その名前を、僕は彼女に言った。

「――ひじ、り…?」

彼女――聖が呟くように返した。

僕は首を縦に振ってうなずくと、
「お前の名前は“聖”だ」

言い聞かせるように、聖に言った。

名前の由来は、聖なるこの夜にお前と出会ったからだ。

聖なるこの夜にお前を拾ったから、この名前をつけることにした。