冬の寒さは、骨身に感じるから苦手だ。

「――寒ッ…」

コートの襟を立てて、僕こと西山春海(ニシヤマハルミ)は何とか寒さから身を守ろうとした。

夜は寒さがさらに増したような気がする。

寒さに震えながら、ようやく家路にたどりついた。

「ただいま」

灯りのついているリビングを見た瞬間、寒さが和らいだ。

靴を脱いでリビングに行くと、誰もいない。

「もう寝たか」

もう、10時過ぎだ。

眠るには当たり前な時間だろう。

そう思っていたら、
「おかえりなさい、春ちゃん」

後ろから声をかけられた。