聖が心配そうに僕を見つめる。

僕は唇だけ動かして、彼女に大丈夫だと伝えた。

「お久しぶりです、奈津子おば様」

電話の主は3人の大おばの1人である、金井奈津子(カナイナツコ)おばさんだった。

父親に何回も見合い話を勧めていた人物でもある。

「お久しぶりね、春海さん。

年末年始に帰ってこなかったから、心配していましたよ」

もう10年、僕は親戚のところに帰っていない。

「すみません、仕事で忙しくて」

共有した時間を隠すように、僕はまた1つとウソを重ねた。