「今日は早かったね」

聖が僕の後ろをついてきた。

「早く帰ってきちゃ困るか?」

そう言った僕に、
「そう言う意味じゃないよ。

昨日は遅かったから、今日はずいぶん早く帰ってきたんだなって思って」

聖が言い返した。

「毎日帰りが遅いって訳じゃないよ」

「わかってる」

そんな会話を交わしていた時、電話が鳴り出した。

「何だろ…」

僕は電話に歩み寄ると、受話器を手に取った。

「もしもし?」

「春海さん?」

その声を聞いた瞬間、僕は神経をとがらせた。