「いや、部長ってそう言う話がないなって」

「話?」

聞き返した僕に、
「色恋系の話を聞いたがことないなって」

彼は答えた。

ああ、そう言うことか。

「俺は会社の中で恋人を作る主義じゃないから」

僕は彼にそう言った後、笑ってごまかした。

聖との関係は、誰も知らない。

別に、公表するほどのことじゃないと思っているからだ。

公表したって、そんな大げさなことではあるまい。

僕の中の秘密は、秘密のままだ。

誰かに聞かれたら、さっきのように笑ってウソをつく――そんなことを、今まで何回やってきたのだろう。