「じゃ、行ってくるよ」

「行ってらっしゃい、春ちゃん」

聖が僕にカバンを渡した。

「僕が帰ってくるまで、絶対にドアを開けるなよ?」

そう言った僕に、
「わかってるよ、私はもう子供じゃないんだから。

春ちゃんこそ、早く行かないと遅刻するよ」

「ん」

チュッと、一瞬だけ唇にぬくもりが触れた。

「じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃーい」

玄関先での聖とのやりとりは、毎朝の日課となっている。

聖ともっと話したくて、もっといたくて、僕は日課を続けている。