「春ちゃん」

帰りの車の中、聖が声をかけてきた。

「んっ?」

僕が聞くと、
「ありがとう」

聖にお礼を言われた。

「産むって、言ってくれて」

そう言った聖に、
「――当然だろう…」

前に視線を向けながら、僕は言った。

「僕と聖の子供なんだ、当然のことだろう?」

僕と聖の愛の絆――その絆を壊す気など、全くなかった。

10年と言う時間をかけて、ようやくできた僕と聖の愛の絆を壊したくない。

「でも…結婚はしない、籍も入れない」