目の前には白い布がかぶせられて、横になっている父がいた。

そんな父のそばで、母は声を張りあげて泣いていた。

事故だった。

大型トラックにひかれ、父は死んだ。

私が10歳のことだった。


その日から、母は狂った。

突然の事故で父を亡くしたショックで、母は狂った。

いなくなった父を探す母が、私は怖かった。

もういないのに、それでも父の姿を探す母が怖かった。

でも私は、信じていた。

母が治ってくれることを信じていた。