会社近くの喫茶店に入ると、奈々恵と向きあった。

「すみません、こんなお忙しい時間にお呼びして」

そう言った奈々恵に、
「いえ…もうすぐ休みに入るところでしたから、お気づかいなく」

僕は首を横に振った。

一体、何しにきたと言うのだろうか?

そんな僕の気持ちを読んだのか、
「実は、お見合いのお断りにきたんです」
と、奈々恵が言った。

お見合いのお断りって、どう言うことなんだ?

「私、本当は心に決めた人がいるんです。

その人とは、結婚も約束をしたお相手で」

奈々恵は少し目を伏せると、話を始めた。